ミャンマーの詐欺拠点で保護された何百人もの外国人たち。彼らの多くは人身売買によって連れてこられ、世界中にインターネット詐欺をするよう強要されたと語っている(AFP=時事)
「中国人が現地の役人に賄賂を渡して詐欺を続けていました。それでも、あまりに詐欺被害が多発して取り締まりが厳しくなり、僕を含めた何十人、何百人、いや何千人かもしれませんがたくさんの人が逮捕された。指示役とか(詐欺電話のかけ子の)見張り役みたいな人たちは、摘発の前に一斉に東南アジアへ逃げました。逃げた先でも、現地の政府関係者への賄賂攻勢が効き、詐欺を続けられていたようです。当時、私を脅していた中国人幹部は『金があればいつでも逃げられる、なんでもできる』と言って笑っていました。今はインスタもやっていて、それを見ると身体中がイレズミだらけになっていて、迫力が余計増してました。スポーツカーに乗ったりいいものを食べたり、リッチな自分の生活を見せびらかしていますよ」(中国で拘束された日本人男性)
彼が中国から強制送還されてから約3年後、高齢の女性が殺害されるなどした広域連続強盗事件、いわゆる「ルフィ事件」が起きた。ルフィ事件で逮捕された指示役らは、フィリピンの入管施設に収容されたまま、職員に賄賂を渡して本来なら没収されるはずのスマホを自由に使い、専用の個室まで用意されていた実態が明るみに出ている。どんな場所にいようとも、そこからリモートで指示を出し、闇バイトで集めた一般人に実行させて犯罪グループを存続させることができるのだ。「金さえあればなんでもできる」と言い放った中国人詐欺師の幹部たちは、ルフィ事件の指示役たちのように、拠点をどこに置こうと人を騙す生業を続けるという選択をした。
やけになって詐欺に加わった日本人は帰国を望まない
リゾート開発など、まともなビジネスのために進出していた中国資本が引き上げたあとの地域に、入れ替わるように中国の詐欺集団が進出、現在の跋扈に繋がった。いま現地では、拉致されるなどして連れてこられた外国人たちが、それぞれの母国の当局の手によって次々に救出されていると伝えられている。だとすれば、噂されている大量の「日本人」の帰国も早いかもしれないが、そう簡単にはいかないと悲観的な見解を示すのは、前出の東南アジア在住の男性だ。
「高校生みたいな人たちは、純粋に騙されているので帰りたいと思うでしょう。しかし、日本でうまくいかず、半ばやけになって詐欺に加担しようとやってきた日本人も少なくない。彼らの中には、詐欺の拠点に連れて行かれ、毎日のように殴られたり、スタンガンを押し付けられたりして酷い目にあっても、反発することなく従順に中国系詐欺師集団のコマになっているような奴もたくさんいる。こういう日本人は、逃げ出さない限り次の拠点へ連れて行かれる。日本政府が保護すると宣言したところで、今さら泣き言をはいて帰りたいとは言えない。帰国しても逮捕されて、ろくなことが待っていないと思っている。家族の情報など握られて、詐欺師集団に脅されるパターンも多いです」(東南アジア在住の男性)