ドラゴンズの魅力は、嘉納治五郎ばりの「柔よく剛を制す」と、巨大な敵を無名戦士たちが倒すことだが、もう一つはその粗削りなところではないだろうか。
杉下のフォークボール、権藤の35勝、小川健太郎の背面投げ、デービスのランニングホームラン、宇野のヘディング(?)……。
そういう人材を待望しているんだ。やっぱり、人なんだ。
ドラフトはよく「補強」と呼ばれる。足りないところを埋めるのは定石かつ必然なんだろうけど、やっぱり1人か2人は大博打に出てほしいな。
その意味じゃ、ブライト健太選手を獲得したときには、ちょっとワクワクした。この選手、ケンケンで一塁まで跳んでいったとき、鈍足の選手くらいのスピードで到達したと騒がれた。そういう選手。
いずれは高橋宏斗投手もメジャーに行ってしまうのだろう。そのときは手放しで応援したい。
そして言うのだ。「次の宏斗はもう育っているから」と。
まるで60年代アメリカのハッカー精神のように。
(シリーズ終わり。第1回から読む)
※『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』(小学館新書)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
富坂聰(とみさか・さとし)/1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授、ジャーナリスト。北京大学中文系中退。1994年、『龍の伝人たち』で21世紀国際ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。『中国の地下経済』『中国の論点』『トランプVS習近平』など、中国問題に関する著作多数。物心ついた頃から家族の影響で中日ファンに。還暦を迎え、ドラゴンズに眠る“いじられキャラ”としての潜在的ポテンシャルを伝えるという使命に目覚めた。