『おかあさん』第236話「汗」(デジタル修復版)より。実相寺のこだわりが垣間見える
実相寺は、「フリーランスは大変だな、局員って恵まれてたんだな」という主旨のことを綴っている。
「昨今、私の同世代にも局をやめていく人間が多いですし、配信プラットフォームで年契約をして移籍する、みたいな人もいっぱいいる。
僕自身はテレビマンでありながら、会社の後ろ盾でちっちゃな映画を撮ったりもします。公共の電波であるテレビは、ある意味、“権力”ですよね。そういったものの庇護で守られながら、自分が甘えさせてもらっているという自覚がものすごくある。だから実相寺に『やめてよかったですか?』と聞きたいんです。『もう少し社内で模索する方法はなかったんですか?』と」
ドラマとドキュメンタリーの本質は異なる
実相寺がTBSに入社したのは、1959年。テレビが「電気紙芝居」と揶揄され、映画よりも遥かに「格下」に見られていた時代だ。一方、佐井は2017年入社で、テレビが「斜陽産業」と揶揄されている時代にテレビの世界に足を踏み入れた。
「実相寺さんがどれくらいの志で入ったかというところは計り知れないんですけど、おそらく僕よりもすごく高い志というか、覚悟みたいなものがあっただろうなと思います。だから一個一個が命懸けの表現になっている。でも僕の場合は、正直に言えば、ものづくりへの志よりも、大企業という安定性が大きかったです」
佐井は入社後、志望どおりドラマ制作部に配属され、『あのクズを殴ってやりたいんだ』『Eye Love You』など連続ドラマのプロデューサーを務めている。
「でも自分がやれると思っていませんでした。本当に運が良かっただけ。たまたまTBSに受かって、たまたまドラマ部に配属されて。ADもちゃんとできなかったのに、時代的に“怒られること”が少なくなったから、先輩たちに比べれば叱られずに済んだ。あと2~3年早く入社していれば、今は違う部署にいたかもしれません」