フィリピン・マニラ近郊にあるビクタン収容所。日本で集められた実行役に強盗を指示していたとされる(時事通信フォト)
「ルフィ」らを指示役とする広域強盗のうち2022年11月から2023年1月までに発生した6件に実行役として関わったとして強盗致死などの罪で問われていた永田陸人被告(23)に対する裁判員裁判は昨年10月から東京地裁立川支部(菅原暁裁判長)で開かれ、同年11月7日、求刑通りの無期懲役が言い渡されている。
裁判員裁判で永田被告は公訴事実を全て認め、全ての事件を詳細に語った。石川県で土木関係の仕事をしていた当時、競艇にのめり込み借金を作る。SNSで「闇バイト」を検索したのは2022年11月。フィリピンにいる指示役と繋がり、立て続けに事件を起こす。1件目の神奈川県での空き巣からほどなく、東京・中野区で2件目の強盗に参加した永田被告だったが、突入後に家人から激しい抵抗に遭った。そのため次の事件には、モンキーレンチを準備して参加したが、これが重大な結果をもたらすことになる。裁判での被告の証言を振り返る。【前後編の後編 前編を読む】
* * *
「男性は激しく抵抗していたので、私はまずいなと思いました。3人がかりでも全く制圧できていない。私は現場のリーダーとしてこの案件を任されていたし、私が広島駅に到着した時の実行役の私への目線や、尊敬しているとか、頼りにしているとかも散々言われていたので、全く制圧できてなくて反抗されてしまえば、私のメンツが潰れ、リーダーの立場も潰れる。その意味でまずいなと思いました。ですので私はポケットのモンキーレンチを取り出し、フルスイングで男性の後頭部を目掛けて殴りました。柄の部分を右手で持ち、先端の丸みを帯びたL字部分で殴りつけました。すると反動でモンキーレンチが後ろに飛んで行きました」
最終的に他の家人を脅して金庫を開けさせ、金品を奪い逃走したが、永田被告は現場では自身の行為の危険性を認識していなかったと話す。過去の「叩き」において同様に暴力を振るったことがあるが、被害者がさほどダメージを受けていなかったことなどをその理由にあげていた。
「死ぬことはなく、もし気絶すれば戦意喪失する、そのどっちかだと思っていました。殺意は一切争うつもりはありません。しかし私個人として、ぶん殴っても死なないという認識でした。しかし、凶器で力一杯殴ることは、法律的観点で言えば、殺意を立証されるとわかっているため、争いたいとも思ってないし、争う必要もないと思っています」