永田被告の獄中手記。初めて犯罪に手を染めたのは中学1年生の時だという
指示役から「根性あるからやればいいじゃないですか」と言われた
実行役リーダーとしての立場を誇示するための指示が、意図を汲まない実行役により最悪な形の暴力となり表出した。千葉の事件と同様、現金を奪うことはできず、他の実行役が見つけた腕時計3本を奪って撤退。しかも女性は本来のターゲットではなかった。現場で“本当にこの女性がターゲットなのか”と疑念を抱いた永田被告が「キム」に確認すると「あちゃー、人違いですね」と言われたという。同日夜、「キム」から女性が亡くなったと知らされた。
「人を殺したことについては、もう後戻りできないなと思いました。私は独特の倫理観……復讐のための殺しならいい、という倫理観がありましたが、今回は全く関係ない。一般人を殺すのは人間じゃない、外道、クズだ。自分でもう終わったなと、自分の存在が終わったなと、自分の考え、全てが終わったなと思い、あー終わった、と」
“終わった”と思った永田被告にもう止まる理由はなかった。「キム」から続けざまに紹介された“案件”を翌日もまた実行する。しかし次は現場に突入する実行役ではなく運転手役を選んだ。
「キムさんからは『えっなんでカルパスくんやらないんですか。根性あるからやればいいじゃないですか』と言われていましたが、やりたくなくて、ずっと説得していました。正直、実行役より指示役が楽だったし、そして、1つ……狛江事件では被害者が亡くなってしまった。翌日にニュースを見ながら思ったのは、自分が現場にいたら、広島でも重体になっている。おれのせいだ、となって、またやっちゃうんじゃないか、自分はもういないほうがいいんじゃないか、僕がリーダーじゃなかったらこんなことにならなかったんじゃないか、実行役は嫌だと思うようになりました」
こうして運転手役として他の実行役を東京・足立区の民家に送り、近くに車を停めていたところを警察に職務質問される。車内から前日の狛江事件で奪った腕時計が発見されたことから逮捕に至った。