「マサカリ打法」で人気だった中日・木俣達彦のバッティング(時事通信フォト)
最下位からの劇的な復活を目指す中日ドラゴンズについて異色の本が出た。新書『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』では、拓殖大学海外事情研究所の富坂聰・教授が、自身の半生をもとにドラゴンズのファン心理を綴っている。「日中問題」のスペシャリストである富坂教授が「中日問題」について綴るシリーズの第4回は、多くのドラファンが抱える“複雑にして屈折した中日愛”だ(シリーズ第4回。第1回から読む)。
* * *
ところで「ドラゴンズの西本」を語るとき、避けて通れないのがドラゴンズファンに染みついた(と私が勝手に思っている)二元論だ。
虚と実、表と裏、正と邪、陰と陽、美と醜、曲と直、清と濁など、どちらかに分けて考える「癖」とでもいうべきか。
たとえば、山口百恵は「正」で、桜田淳子は「邪」(ごめんなさい淳子さま)とか、輪島は「正」で、北の湖は「邪」(後になって正邪が逆だったと知るのだが)というやつだ。
子供の頃、母親の前で「山口百恵が好き」と言うのは平気だったが、「桜田淳子が好き」とはなかなか言い出しにくかった。
成人してから桜田淳子というアイドルのポテンシャルの高さに気がつくのだが、子供がそこに反応してしまってはいけないような気がしたのだ。少なくとも親には絶対知られてはいけない、何か、罪深さを伴ったからだ。
巻き舌で「ウララ、ウララ~」って歌ってた山本リンダを好きだっていうわけじゃないんだけどね。
成人して中国に留学する頃になって、私はやっとその「正邪」の桎梏を解かれ、後ろめたさから解放された。そう「解放」だ。中国には中国人民解放軍というのがあって、その「八一」マークを見るたびに、「桜田淳子」を思った。
だって、吉永小百合が好きですとか、八千草薫が好きですとか、分かるけど、どっかつまんなくない? 杓子定規っていうか。
そんで、ジャイアンツが好きってのは、この枠だからね、言っとくけど。