2000年代後半の黄金期を支えた荒木雅博と井端弘和の「アライバ」コンビ(産経新聞社)
当然、ドラゴンズには冷淡だ。だから、「『燃えよドラゴンズ!』を入れて」と頼んだら、いきなり2005年の水木一郎バージョンがスピーカーから流れ始めた。
えっ、これじゃないよ、とちょっと戸惑ったが、ここで勢いを失っては縁起が悪い。とにかく歌ってやろうと声を張り上げたが、歌い始めてすぐ、心が折れそうになった。なんて豪華なメンバーだったんだ! と、シミジミ思ったからだ。
だって、一番の荒木(雅博)と二番の井端(弘和)でいきなりヒット・エンド・ランを決めちゃうんだ。そんで三番立浪(和義)タイムリー、四番ウッズがホームランだ。
まだまだ続いて五番の福留(孝介)は「打ちまくる」(?)し、六番で「続くぞアレックス(オチョア)」、七番森野(将彦)だ、井上(一樹)だ(て、どっちだ?)、ときて谷繁(元信)につながるんだ。
さらに凄いのは投手。エースが川上(憲伸)、大将(?)山本(昌)、ときて、日本シリーズであわや完全試合というところで降板して話題になった山井大介投手は、「山井、落合(英二)、朝倉(健太)」と一括りにされて、最後は岩瀬(仁紀)だ。
こりゃ、強いわな。
だからこそ名古屋のドラファンは、ちょっと反省しなければならない。
あんなに強かった常勝チーム。その時代に、ナゴヤドーム(現バンテリンドーム)からは客足が遠のき、閑古鳥が鳴いていたという。なんて冷淡なんだ、名古屋人。新幹線乗ってエスカの「タンポポ」で大盛焼きそば食って、「伊神切手」でチケット買って駆け付けたかったわ。
(第5回に続く)
※『人生で残酷なことはドラゴンズに教えられた』より一部抜粋
【プロフィール】
富坂聰(とみさか・さとし)/1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授、ジャーナリスト。北京大学中文系中退。1994年、『龍の伝人たち』で21世紀国際ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。『中国の地下経済』『中国の論点』『トランプVS習近平』など、中国問題に関する著作多数。物心ついた頃から家族の影響で中日ファンに。還暦を迎え、ドラゴンズに眠る“いじられキャラ”としての潜在的ポテンシャルを伝えるという使命に目覚めた。