155キロの速球を武器に先発、抑えで活躍した中日・鈴木孝政。1976年には最優秀防御率と最優秀救援のタイトルを同時に獲得した(時事通信フォト)
小川、権藤、杉下と並べると、やっぱり中日ドラゴンズは人材の宝庫、多士済々だ。
それに比べてジャイアンツ。「巨人軍は常に紳士たれ」って? そんなチーム、おもしろいか? スーツ着てファミレスに行く、みたいな感じだ。
逸材といえば、ドラファンの盛り上がる話題の上位にあるのが、中京圏出身プロ野球選手でつくるドリーム・チームだ。
権藤、杉下のいるチームだが、そこに400勝投手のカネやんこと金田正一投手、西武とダイエー、巨人で活躍した工藤公康投手。巨人の槙原寛己投手。そしてイチロー選手だ。できればここに松井秀喜選手も入れたい。松井はかろうじて中日新聞の勢力圏の出身(石川県)だし。ちょっと無理やりだけど。
いやー、楽しい。この話でいくらでも原稿は書けるのだが、怒られそうなのでやめておく。
酷使され短命に終わった速球派投手たち
ただし、気になることもある。名古屋のスターは概して短命だってことだ。ドラゴンズが好きだからといって、そこは引っかかる。
期待の星が散ってしまうパターンは主に2種類だ。
ひとつは、華々しくデビューした投手を連投、連投、また連投で酷使し、最終的に壊してしまうパターン。もうひとつは大型ルーキーをちゃんと育てられないケースだ。
本シリーズの原則は、野球の技術的なことには触れないこと。専門家じゃないから当然だが、それを踏まえたうえでいえば、やはり酷使して、故障して、選手生命が縮んだという速球派投手がちょっと多すぎるんじゃないかって話だ。
権藤の話は書いた。それに続くのは鈴木孝政投手から浅尾拓也投手に至る流れだ。
鈴木(タカマサ)から小松辰雄投手、与田剛投手までは、まだ昭和臭プンプンの時代だ。スポーツに限らず、サラリーマン戦士の評価表にも「根性」の欄があった(はずだ)。
『巨人の星』の星飛雄馬が、魔球を投げるたびに体が破壊されてゆくというストーリーに全国の少年が涙したように、滅私奉公、無私の精神は美談と持てはやされた。
そして選手はファンの美しい涙に見送られ、引退……。その後も長い人生があるという現実には、なかなか目が向かなかった。
この問題は球団だけじゃなくてファンも悪い。いや、ファンとメディアが悪い。
本当は、戦争の責任は東京裁判で裁かれたA級戦犯だけではなく、国民にも十二分にあったというのと同じだ。だって、戦前だって一応は選挙してたんだから、そういう政治家を選んだのは誰だって話だ。大本営発表を垂れ流して戦意を煽ったのは当時の新聞だった。山本七平氏の『空気の研究』じゃないけど、少なくとも戦争に肯定的な空気があったから、主戦論者が勢いづいたのだ。