金五郎は荒っぽい世界に生きながら暴力を嫌い、周囲に慕われ見込まれ、いつしか仲間の恵まれない境遇の改善に取り組むようになる正義感の強い男。原作小説を書いた火野葦平は実際の金五郎の息子だが、実は、アフガニスタンやパキスタンで医療活動や井戸の掘削に取り組みながら、2019年に凶弾に倒れた中村哲さん(享年73)は、火野の甥(金五郎の孫)だ。金五郎の正義感の強さや行動力は、中村さんに受け継がれていたようだ。
「原作はもちろんエンタメ小説なんですけど、虚構とばかりは言い切れないと感じますよね。『花と龍』には心が洗われる部分がある。今の世の中、殺伐としてるでしょ。足の引っ張り合いをしたり、嘘でも大きい声で言えばホンマになったり。漫画みたいな世の中になってきたな、と思います。そんな今だからこそ、みんなにこの『花と龍』をドーンと観せてやりたい。観てどう思うんやろ、って。幕が開くのが楽しみです」(山内)
取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫
『花と龍』
2月8日(土)~2月22日(土)、KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉で上演
原作:火野葦平
脚本:齋藤雅文
演出:長塚圭史
音楽:山内圭哉
出演:福田転球、安藤玉恵、松田凌、村岡希美、稲荷卓央、山内圭哉、大堀こういちほか